神道のお葬式
◆神道の葬儀の意味
神道の葬儀は、神葬祭・神道葬祭・神葬とも言い、仏式葬に対して起こった名称で神道の儀礼によって行う葬祭のことを言います。
教導者によって霊魂観に違いがありますが、祖先の神から出たものは、祖先の神の元へ帰っていくという死生観をもっており、日本人の生命は祖先から自分。そして孫へと永遠に血を心の連続を形成していくものと考えられています。したがって、神葬祭の式次第やそれにつながる霊祭、祖霊祭の次第を見ても、全てこの信仰に基づいてなされているのです。
氏子が死んだときには、まず、氏神に奉告すると共に、その家の祖霊舎に報告する祭りが行われます。これは、その帰るべき魂の行方が、祖先のところであり、祖霊によって導き守って欲しいと願うものです。また、それに続く遷霊祭【せんれいさい】の儀を見ても、霊璽【れいじ】にみたまを納め、その家の祖霊舎に奉告する祭りが行われます。さらに、埋葬の儀を見ても、亡骸【なきがら】は先祖代々の墓地に先祖と共に葬られ先祖のところに眠ることになります。
葬祭の祝詞【のりと】の中に、「天翔り、国翔りして見そなはしませ」とありますが、自分の郷土の静かな高いところから、亡き魂が現世の人たちの上を見守っている。呼べば答えるところに漂い座して、みたま祭りのときには、いつでも降り座すという信仰がその根底にあるものと考えられています。ただ、神葬祭は多くの祭儀から成り立っていますので、神葬祭は神社の祭典のごとく一定した規定があるわけではなく、地方による慣習の違いから祭式(祭の次第)に多少の相違はあるものの、江戸時代から今日に至るまでとりたてて大きな変化もなく、大体において共通した祭儀となっています。
◆臨終と通夜
1.枕直しの儀
(1)遺体に白木綿の小袖を着せ、仏式と同じように、北枕に寝かせて、守り刀、または守り鏡を枕元に置く。
(2)枕飾りは、「案」と呼ぶ白木の八足の上に三方を置き、それぞれの容器に水、塩、洗米、御神酒を載せ、榊を飾る。
(3)枕飾りのあと、遺族、近親者、親しい人たちが、故人の安らかな眠りを祈る。(神職者は、枕直しには招かず、通夜祭および葬場祭に招くのが一般的)
2.納棺の儀(遺体を棺に納める式)
(1)喪主が一拝する。
(2)親族の手で遺体を棺に納め、周りを白菊などの生花で飾る。棺に蓋【ふた】をしてから白布で覆う。
(3)棺を通夜を行う部屋に移し、祭壇の中央に安置する。
(4)手水【ちょうず】の儀を行う。
(5)祭壇に、遺影と供物を供え棺前に着席する。
(6)喪主、遺族、近親者、会葬者の順に二礼・二拍手・一礼をしのび手(音を立てないように拍手を打つ)で行い、最後に喪主がもう一度拝礼する。
3.通夜祭及び遷霊祭
「通夜祭」とは、仏式の通夜にあたる儀式をいう。「遷霊祭」は故人の霊を霊璽に移し納める式である。斎主が生饌または常饌を供え、祭詞をとなえて拝礼する。
■通夜祭の式次第
(1)斎主の祭詞=祭壇の前に斎主、喪主、参列者が着席し、斎主が祭詞をとなえて一拝する。
(2)玉串奉奠=玉串は、榊の枝に木綿または紙をつけて神前に捧げるのに用いるもの。斎主が玉串を奉って拝礼する。続いて喪主から血縁の濃い順番に玉串を捧げる。
■遷霊祭の式次第
(1)斎主が棺の前にある霊璽を棺のほうに向け、故人の霊が遷るように遷霊詞をとなえる。(このとき、家中の灯は消しておく)
(2)遷霊詞を終え、霊璽を祭壇に安置した仮霊舎に納め、室内の灯をつける。(この儀式で、故人の霊は喪人の守護神になる)
(3)斎主、喪主、一同が仮霊舎の前に者席し、斎主が一拝し、副斎主または斎主の献饌(洗米・塩・水を供える)を行う。
(4)斎主による遷霊祭詞の奏上(参列者一同は深く頭をたれる)
(5)もう一度、一同が順次に玉串奉奠をして通夜祭を終わる。
4.通夜振る舞い
通夜祭、遷霊祭が終わると、仏式と同じように通夜振る舞いを行う。
◆葬場祭
「葬場祭」は、仏式の葬儀と告別式を合わせたようなもので、故人に対して最後の別れを告げる式である。神式では葬儀を神社で行わないので、斎場や自宅で行う。
1.準備
会場の一段高い壇上に斎主と斎員、楽人の席を設ける。棺は部屋の中央の一番奥に置き、銘旗【めいき】を立て、棺の三方に縫い取り模様のある幕をめぐらし、その外に忌み竹、しめ縄、鯨幕を飾る。祭壇には、灯明、榊、遺影、供物を飾る
2.葬場祭式次第
(1)一同手水
(2)神職者入場
(3)開会の辞
(4)修祓【しゅうばつ】=斎主は葬場・供物・参列者などを祓い清める
(5)斎主一拝
(6)奉幣、献饌=神に幣帛【へいはく】、饌(食べもの)をささげる
(7)斎主祝詞奏上=故人の経歴、人柄、功績などを述べ、祖先の霊とともに喪家と遺族を護るよう祈願する
(8)しのび歌奏上=副斎主が、故人を偲ぶ「しのび詞」を奏上する
(9)斎主玉串奉奠
(10)喪主玉串奉奠
(11)撤幣【てつぺい】、撤饌【てつせん】=副斎主、祭員により、神饌、幣帛がのぞかれる
(12)斎主一拝
(13)神職者退場
(14)葬場祭閉式の辞
(15)告別式開始=一般の会葬者が玉串奉奠をする
(16)閉会の辞
3.出棺祭
棺が喪家を出て、火葬場、または墓所へ向かう儀式
(1)最後の対面(仏式とほぼ同じ)
(2)くぎ打ち(仏式とほぼ同じ)
(3)出棺(仏式とほぼ同じ)
4.後祓いの儀
仏式にはない儀式で、出棺のあと家に残った世話役、親類によって祭壇を取り外し、家の内外をきれいにする。一同手水をし、神職者に祓い清めてもらう。
5.火葬祭
火葬祭は、火葬場のかまどの前で行う。棺をかまどの前に安置して、葬儀場から持参した銘旗、生花を飾る。
(1)参列者一同手水をする
(2)神職者の祭詞奏上のあと一同礼拝、玉串奉奠を行う。
6.埋葬祭
神式では、火葬が終わったその日に埋葬する習わしである。
(1)遺骨を墓所に納めてから、神職者の祭詞奏上、玉串奉奠がある。
(2)墓所の中の遺骨に、参列者が一握りずつ、土をかける場合もある。
7.帰家修祓の儀
埋葬に参列した人たちを清めることで葬儀の終了となる。埋葬をすませた参列者一同は、神職者に門口でお祓いを受け、手水で清めてから家に入る。
8.帰家祭
新しく用意された祭壇(仮霊舎)に霊璽や遺影を飾り、本幣献饌が行われる。
(1) 斎主祝詞奏上、一同拝礼、玉串奉奠で終了する。
9.翌日祭
葬儀がすべて終わり、埋葬がすんだ翌日に行われる。神職者を招いて、自宅または墓前で葬儀が終了したことを報告する祭儀である。現在は省略したり、身内だけで簡単に行われることが多い。
翌日祭以後の霊前祭 死亡の日から数えて十日目ごと(仏式の初七日にあたる)に5回、霊前または墓前で供養をする。(五十日祭は忌明けにあたる)また、百日祭(死亡の日から100日目)、一年祭(死亡の日から1年後)などがある。
特に、五十日祭と一年祭を重くし、一年祭は丁重にする。
◆清祓の儀
五十日祭(あるいは百日祭、一年祭)の翌日に神職者と遺族だけで営む祭儀である。清祓【きよはらい】を行い、これがすめば神棚および祖霊舎の前の白紙を取り除き、祖霊舎に合祀する。
※参考