浄土宗のお葬式
浄土宗の葬儀は、死者を仏の弟子として、仏の本願により阿弥陀仏の下である極楽浄土に往生することを教え導き、本来の住処、生命の根源である極楽浄土へ立ち戻る凱旋式として行うと考えられます。
このために参列する者にも、深い悲しみのうちにも自らの死の意味を問い、清浄な心で仏の教えに耳を傾け、授戒し新しく仏の弟子(=新発意、しぼち)となった亡くなった方と共に、一心に念仏する生活に生きる決意をする契機となることを願っています。
浄土宗の法要は、序分(法要を行うにあったって仏をお迎えする部分)正宗分(法要で仏のお話をうかがう部分)流通分(法要を終えたら感謝して仏をお送りする部分)3段階で構成されています。この通常の法要に授戒と引導が加わったのが葬儀です。
授戒は仏法に縁のなかった人でも戒名を授けて仏の弟子とすることで、引導は仏の弟子として教え導くことです。生前は授戒会に出ている場合には授戒は省略され、引導だけになります。僧侶の場合には授戒も引導もありません。
◆臨終と通夜
浄土宗では、臨終行儀を大切にしてきた伝統から枕経を重視し、このとき授戒するのが基本とされます。しかし、枕経は来迎仏をあげて念仏だけでよいとされ、授戒は通夜のときにするのが一般的となっています。枕経(授戒が行われる場合)の次第によっては次のようになります。
1.奉請【ぶじょう】諸仏の入場と願う。 |
2.広懺悔【付懺悔偈】懺悔偈 (略懺悔)【こうざんげ、ふさんげけ、さんげげ、りゃくさんげ】迎えた仏、菩薩に対し自己の罪業を懺悔する。 |
3.剃度作法【ていどさほう】剃刀を頭にあてて十念を唱える。 |
4.授与三帰三竟【じゅよさんきさんきょう】授戒にあたり三宝に帰依。 |
5.授与戒名 戒名を授与。 |
6.開経偈【かいきょうげ】誦経に際し教えの真髄を体得することを願う。 |
7.誦経(読経)【ずきょう・どきょう】一般に「四誓偈」【しせいげ】または「仏身観文」『阿弥陀経』。 |
8.聞名得益偈【もんみょうとくやくげ】「仏の本願により皆往生する」との偈。 |
9.発願文【ほつがんもん】臨終の心得をし阿弥陀仏に帰依。 |
10.摂益文【しょうやくもん】「念仏を唱える者は皆仏に守られる」との偈。 |
11.念仏一会 救われる幸いを喜び、感謝して数多く念仏を唱える。 |
12.総回向偈【そうえこうげ】誦経、念仏の功徳を全てに振り向け往生を願う。 |
この他、納棺式(納棺中は念仏を唱えることを主とする)、通夜(特に定まっていない)、迎接式【ごうしょうしき】(通夜の翌朝、寺より派遣された僧が葬場に引接するための式で自宅を葬場とするときは省略)があります。
◆葬儀式
「堂内式」と称します。以下、自宅式の場合には省略することが多い部分は※印で示します。
◆序分(諸仏を迎え、讃嘆し、仏前で懺悔する部分)
1.※洪鐘【こうしょう】=法要があることを案内。 |
2.※法鼓【ほうこ】=法要の開始準備を案内、遺族、参列者入堂。 |
3.※喚鐘【かんしょう】=導師・大衆(式衆)の入堂開始 |
4.※作相【さそう】=威儀を整える。 |
5.入堂 導師・大衆(式衆)の入道(入場)。 |
6.香偈【こうげ】香をたき、清らかな心になることを願う。 |
7.三宝礼【さんぼうらい】仏、法、僧の三宝に礼をする。 |
8.奉請【ぶじょう】諸仏の入場をお願いする。 |
9.懺悔偈【さんげげ】迎えた仏、菩薩に対し自己の罪業を懺悔する。 |
◆正宗分(仏の説法を聞き念仏し、その功徳を回施する部分)
10.転座【てんざ】本尊を向いていたのが柩に向かう。 |
11.作梵【さぼん】転座する際に梵語の「四智讃」を唱える。 |
12.合鉢【がっぱち】はちを鳴らす。 |
13.鎖龕【さがん】柩を閉ざす儀式。 |
14.起龕【きがん】葬場へ赴くために柩を起こす儀式。 |
15.奠湯【てんとう】葛湯を霊前に供養する儀式。/FONT> |
16.てん茶 茶を霊前に供養する儀式。 |
17.霊供【りょうぐ】仏飯を霊前に供える。 |
18.念誦【ねんじゅ】念誦僧が節をつけて唱えること。(今ではあまり行わない) |
19.下炬【あこ】2本の松明を持ち、1本を捨て、残りの1本で一円を描き、下炬引導文を述べる。捨てるのは厭離穢土【えんりえど】の意味、一円を描くのは欣求浄土【ごんぐじょうど】の意味をそれぞれ表すという。終えると同時に松明を捨てて十念を授ける。 |
20.弔辞 弔辞があるとこはここに入れる。 |
21.開経偈【かいきょうげ】誦経に際し、教えの真義を体得することを願う。 |
22.誦経・読経【ずきょう・どきょう】「四誓偈」か「仏身観文」が一般的。(この間に焼香) |
23.摂益文【しょうやくもん】「念仏を唱える者は皆仏に守られる」との偈。 |
24.念仏一会【ねんぶついちえ・てんざ】救われる幸いを喜び、感謝し、数多くの念仏を唱える。(この間に柩から本尊に向く) |
25.回向 死者の霊に誦経・念仏の功徳を捧げる。 |
26.総回向 誦経・念仏の功徳を一切のものに振り向け、往生を願う。 |
◆流通分(誓を新たにして仏をお送りする部分)
27.総願偈【そうがんげ】仏道修行の四願を誓い、成就を念じ往生を願う。 |
28.三身礼【さんじんらい】阿弥陀仏への帰依を表明する。 |
29.送仏偈【そうぶつげ】諸仏諸菩薩を心からお送りする。 |
30.退堂【たいどう】 |
※参考